特講1 取引安全 -イラスト編-

エスデイ宅建士 -権利分野-

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特講1 取引安全の保護

理解の一助

今回は「特講1 取引安全の保護」というテーマでお話をいたします。

これまでの学習で、民法が意思表示、法律行為について、有効・無効の判断を示していることを理解していただけると思います。そうした民法での判断、その判断基準の基礎の一つに「本人の意思」があったのですけども、ここではそういった判断基準として重視されているもう一つの見方っていうのかな、「取引安全の保護」ということについてお話をしたいと思います。

これは民法の条文にあるわけでもなく、また宅建試験の問題文にこういった形で現れるものではないです。なんだけども、これから第4講以降も学習を続けていくにあたり、こういう見方を知っておくとこれからの学習についての理解の一助になる、理解しやすくなる材料のひとつになりますので、ということでお話を進めていきたいかなと思っております。

そしたら音声ツールの方で、読み上げやります。それに基づいてまた私の方でコメントさせていただきます。

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特講一、取引安全の保護。契約において重視されるもう一つの観点。
①例えば、売買契約は買主が転売を予定している場合がある。転得者が、さらに別の契約を行うことがある。すなわち一つ一つの取引は、それだけで終わるものではなく、継続して無数の取引を予定している。


次のページ、イラストありますので見ていただいて、さらに次のページ。ということで、音声のイラスト版です。

契約(取引)の継続

売買

売買(転売)

請負

貸借

今ここでAさんがBさんに自分の土地を売った、譲渡したという形で「売買契約」が結ばれたと考えてみましょう。

1個の取引は(1)だけで終わりなんですけど、Bさんはその次にこれを転売しようとしてたと。利ザヤを稼ぐて言ったら変な言い方かもしれないですけれども、すぐに売らなくても、それをさらに譲渡をしていくという形で(2)番です。Bが甲土地をCに譲渡(「売買契約)」、転売です。この人Cは前にも出てきた「転得者」と考えてください。転得者であると。

転得者Cは、今度(3)の取引に移り、転得した甲土地の上に乙建物を建築しようということで、業者Dと「請負契約」、これ請負というのはまた出てきます、請負契約ということで、新たな契約を結んだと。

今度、建物できたと。ここは賃貸の共同住宅で、それをEさんに賃借するいう形で、「建物賃貸借契約」を結んだと。

派生する契約(取引)

金銭消費貸借

抵当権設定

一応イラスト中ではこういう形ですけれども、このCさんは建物を建てるにあたって金融機関からお金を借りて(「金銭消費貸借契約」)、そのために土地だとか建物について抵当権を設定したり(「抵当権設定契約」)というような引き続いていろんな契約ていうのが、継続されているだろうと考えるといいかなと思います。実際の取引っていうのは、商業取引だとか経済活動を見ていただいたらいいと思うんですけども、一連の流れがあり、絶えることなく継続していると。

そうしたら、ちょっと元に戻って、②のところ。

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②そのため、あるひとつの取引が、何らかの事情で成立後に無効にされるとその取引につながる数多くの取引が、無効になってしまう。そうなると円滑な経済活動ができない。

近代法

取引そのもの

以前にお話したのですが、日本の民法っていうのは、西欧西ヨーロッパのいわゆる近代法を基礎にしているのですけれども、近代法っていうのは「個人の意思の尊重」とともに経済活動が活発になってくる中で生まれてきている、そこでの取引そのものを大事にしようという考え方が元よりある、ということを頭に入れておいて次行きましょうか。

なお「成立後に無効」は、法律行為そのものの無効もありますが、むしろ後から取り消されたの場合の「遡って当初から無効」をいいます。次、③のところ、読んでいきます。

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③そこで個々の取引において、一旦成立した取引は、それ自体が保護される必要があり、このことをもって「取引安全の保護」という。

復習

ということです。

それでは次のページ。今まで第1講第2講第3講で能力、意思、代理という話してきました。その復習ということも含めて、「本人の意思の尊重」と「取引安全の保護」が、両天秤(一番最初の絵)のどちら重きに置くか言うことで、判断がかわってくるという話になってくる。復習がてら見ていきましょう。

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■特1-1。契約と取引安全
「本人意思の尊重」「取引安全の保護」

意思 VS 取引

これ基準が2つあって、それぞれについてどうだったかということで見ていきます。

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【意思能力のないもの】
[意思]⇒『無効』

意思無能力者

これはこれで終わりです。意思無能力者の場合は無効ということでした。

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【制限行為能力者】
[意思]⇒『取消しができる』 VS
[取引]⇒『追認できる』

制限行為能力者

取消しができるのだけれども、追認もできますという形で、「取引安全の保護」が図られています。この2つが、第一講の能力のところです。

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【心裡留保】
[意思]
⇒『本人の意思表示として有効』
⇒『相手方、過失、悪意の場合、無効』

心裡留保

ここから第2講の意思で、一番最初に心理留保という話がありました。嘘とか冗談の場合で、それはそれとして本人の意思として有効とするけども、相手方が知っておった(悪意)、あるいは注意義務を怠って知らなかった(過失)の場合、これは無効にするということでした。

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【通謀虚偽表示】
[意思]⇒『無効』 VS
[取引]⇒『善意の第三者に無効を主張できない』

通謀虚偽表示

通謀虚偽表示(仮装譲渡)の場合、もともと無効で買った方も無権利者にもかかわらず、善意の第三者には無効を主張できない「例外中の例外」という言い方しました。「取引安全の保護」を拡張しているといえます。

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【錯誤】
[意思]⇒『取り消すことがができる』 VS
[取引]⇒『本人重過失、動機非表示は、取消しを主張できない』

錯誤

思い違い、間違えは取消しができるということで「本人の意思」が尊重されているんですけども、結構、制約があって本人の重過失や動機の非表示の場合は、取消しを主張できないとなっています。

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【詐欺】
[意思]⇒『取り消すことがができる』 VS
[取引]⇒『善意無過失の第三者に取消しを主張できない』

詐欺

詐欺の場合、取消しができるのですけども、善意無過失の第三者には取消しを主張できないということで、「取引安全」を勘案してる格好です。

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【強迫】
[意思]⇒『取消しができる』

強迫

強迫の場合は、本人には何の落ち度もないということで、取消しができます。次から第3講代理の復習です。

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【代理】
[取引]⇒『顕名なき場合も契約は有効』

代理

代理の原則は顕名なんですけれども、それがなかったからといって法律行為は無効にならない。顕名なき場合も、この場合契約、契約は有効だと。それは代理人が負う形になります。

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【無権代理】
[意思]
⇒『本人、効果なし』
⇒『過失・善意の相手方、取消しできる』
VS
[取引]
⇒『本人、追認できる』
⇒『悪意の相手方、追認催告できる』

無権代理

無権代理の場合は、かなりバリエーションありました。
(ⅰ)本人に効果なし、これは当たり前なんですけども、本人は追認もできる。
(ⅱ)相手方、善意であれば、取消しができる、悪意でも追認催告できる。
ということで、(ⅰ)(ⅱ)の後半、取引安全保護に重きを置いているのが覗えます。

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【表見代理】
[取引]⇒『本人に法律効果を及ぼす。』

表見代理

無権代理のひとつとされますが、無権代理であることに相手方が善意無過失で、代理権の存在を信じさせるような事情がある場合には、本人に法律効果を及ぼすという判断です。「取引安全保護」に重きを置いています。

まとめ

ということで、元に戻って、「本人の意思」ともう一つ「取引の安全の保護」という観点、天秤になってますけれども、意思表示だとか、法律行為の有効無効について、どちらに重きを置くかで、民法の判断はされているということでした。

以上です。次回、第4講の方、進めていくことにいたします。



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