第2講 意思 -イラスト編-

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第2講 意思

イラスト編

エスデイ宅建士、第2講として意思についてお話を進めさせていただきます。

意思

法律行為の出発点

第1講のところで意思表示という話をしました。また、意思能力ということで「意思」という言葉が出てきたわけなんですけれども、民法では法律行為について、とにもかくにもまず本人の意思というのが出発点で、これをすごく大事にしているということがあります。

民法で問うこと

① 真意
② 表示
③ 形成

ところがその意思について、この意思が非常に大事だということなんですけども、その意思というのが、
①本当にその人の気持ちを表している「真意」であったのかどうかいうこと、
②人が分かるような形でそれが表示されるわけなんですけれども、その表示について問題がなかったかどうか
③意思というのは、心の中で形作られていくわけなんですけども、その形成の途中になにか問題がなかったのかどうかということ
の3点についてついて、民法は問う形になっています。

① 真意

心裡留保
通謀虚偽表示

①それで、この「真意」について問題があるんじゃないかってとき、「心裡留保」とか「通謀虚偽表示」これすぐ後で出てきます、こういった真意に問題があった時に、その意思ていうのが有効なのかどうかが問われます。

② 表示

錯誤

②次に、表示に問題があった場合として「錯誤」というような用語で表すようなことが問われます。

③ 形成

瑕疵ある意思表示

③それから、形成という部分については「瑕疵ある意思表示」という形です。

売買契約

売主
買主

で、具体例でここでは契約、売買契約ということで、話を進めます。この2人、人物書いているんですけども、緑の方が全部「売主」、青色の方が「買主」とします。ここでは、土地ってなっています。土地の売買の時に、意思っていうのがどういうふうに判断されるかということで次へ進んでいきます。

心裡留保

嘘や冗談

心裡留保、この「裡」っていうのは衣偏に里です。心裡ということで心の内、心のうちにあると。心裡に留保ですから、心の内に留まっているということで、これは「表示された意思が真意ではなかった」という状況のことを言っています。これ心裡留保という。聞き慣れない言葉かと思いますけども、一つ覚えておいてください。

具体的に何かということなんですけれども、簡単な話「嘘や冗談」だと、真意ではないと。まあそうですね、嘘や冗談は真意ではないです。

(1) 買主が知らない

売主の意思表示は有効

今、売り買いがあったという形で、真意じゃないんだけども『売ります』と言ったと。で、『買いますよ』という場合、この売主の意思表示っていうのは有効なのかどうかいう話になってきます。

民法ではこの場合、『有効である、だから契約は有効』と考えています。というのは、買主は売主の真意まではわからない、だから、それは有効にしないとダメでしょと言う考え方です。

(2) 買主が知っている

売主の意思表示は無効

ところが、この買主が、(売主の)言ってることが冗談だなと、これ嘘だというふうに知っていた場合、これは真意じゃないなってわかっておったという場合は、『無効だ』と。真意じゃないことを知っている、売主の意思っていうのが違うということがわかってるんだったら『その契約は、売主の意思表示からして無効』ということです。

通謀虚偽表示

仮装譲渡

差押えの回避

真意かどうかという話で、次が「通謀虚偽表示」。通謀というのは、謀(はかりごと)を通じているということ。1つの例として、売買契約にみられる「仮装譲渡」という言葉も覚えてください。これは試験問題の文中にも、仮装譲渡という形で出てきます。通謀虚偽表示の典型的な例というのが仮装譲渡で、ここでの例も仮想譲渡と考えていただいたらいいかな。

じゃあ、何故、売主は、真意でないような虚偽の表示をするかということなんですけども、例えば、土地があって税金を、払うべき税金をずっと支払わなかったと、滞納してたと。すると国の方からを「差押え」の形で、財産をもう自分の自由に処分できないにしますという手続きがあって(これまた後ほども出てきます)、それを逃れるために、自分の所有物でなくて人の物になっちゃったと、だから差し押さえできないという形にしてしまおうということで、買ったことにしておいてということで、売主が売ろうとして売ったと。買主もそれは分かっていると、だから「通じている謀(はかりごと)」という形の虚偽であると。

法律効果

無効

で、もちろんこの場合、買主は売主が真意でないことを知ってるんだから心裡留保と同様の状態ということで、これは『契約は無効』という形になります。

相通じている、謀り事を通じてるっていう形で、通謀虚偽表示、仮装譲渡っていうのは無効、この意思表示も当然のことながら無効だし、契約は無効です。

錯誤

思い違い

次いきます。

表示された意思に問題があるということで、「錯誤」という言葉です。これも言葉は難しいんですけど、何のことはない簡単な話、思い違いだと。本人が自分の気持ちを表示する、外に出さないと相手はわからないんで、表示するんだけれども、思い違いから意思とは異なる内容を表示していた。ところがその不一致に本人が気づいていないという場合です。

錯誤の例

区画分譲

この図の例で、宅地分譲があって、区画が[a 1] [a 2 ][b 1][b 2]、という形、こちらが分譲主、買主は、青い帽子、帽子っていうか青い色です。

それで、買主この人は実は [a 2]のつもりで、これが真意です、真意なんだけども、表示としては、表示としては 「[b 2]にお願いします」というふうに言っちゃったと。それで分譲主のこの人は「ああわかった承知しました [b 2]ですね」って答えたんです。けれども、買主はこの思い違いにあとで気がついて、「先ほどは思い違いでした」と言った時に、この契約、意思表示というのは有効なのか無効なのかという話になってきます。

取消しができる場合

動機の表示

例えば先ほどの話、心裡留保だったら、買主は[b 2]って言っており、そのことについて思い違いかどうかってのは、分譲主側は知らなかった、知りようがないということであれば、契約は有効になるということだったです。

ところが、買主は区画を指定するにあたり「広い道路に面した」というふうにちょっと言ってたと。すなわち、「広い道路に面している」ということが真意の根拠となる部分で、これは「動機」といいます。この動機があって、意思表示しましたという話になってきたときに、動機が表示されておったら思い違いでしたということになって、「意思表示を取り消すことがができる」というのが立場なんですね。これが「錯誤」です。

だから、ここの「動機」という部分がちょっと大事、大事っていうのか、後ほど文章解説の方でも、この辺り、順序立ててお話ししますけども、このように言ってたら、この思い違いでしたということができるっていうことです。

改正民法「錯誤」

無効から取消し

錯誤については、もう一つ、令和2年の民法改正で、以前はこれ「無効」ということだったんですけれども、「取消し(取り消すことができる」)に変更なりました、これ覚えておいてください。無効じゃなく取消しだと。「取消し」っていうのは取り消されたら当初にさかのぼって無効、「無効」というのは初めから無効ということでしたけども、取消しということに変更されましたと。

この例でしたら、買主の思い違いがあって[a 2]のつもりなのが、言っちゃったのは [b 2]だけれども、「広い道路に面した」という言い方してると、あなるほど、元々この宅地分譲の区画を買おうとした動機っていうのが表示されておったということで、その場合には取消しができるという形です。

瑕疵ある意思表示

詐欺
強迫

次が「瑕疵ある意思表示」ということで、この場合は形成に問題があったと。意思が形作られている途中に何らかの介入や圧力があって、本人の自由な意思の形成が妨げられておったというような状況です。

ちょっと戻って、「瑕疵」っていうのはなにかということなんですが、本来備えるべき状態だとか品質っていうのが欠けている状態のことをいいます。平たくいうと「キズ」です。瑕疵は、民法用語で他の講でも出てきます。

瑕疵のある意思表示、具体的には何かというと、「詐欺」と「強迫」。詐欺はよく聞くいうこともないですけども「だます」ことです。民法での強迫(きょうはく)というのは強く迫るっていう字面です。刑法だったら「脅す」です。よく聞く脅迫はこちらの脅す方の脅迫なんですけれども、民法用語では強く迫る、まあ「無理強い」です。詐欺(騙し)、強迫(無理強い)という2つのパターンがあってということで、まず、文章解説と順序を変えているんですけども、強迫の方から説明します。

強迫

取消しできる

これは、強迫と売買契約という設定で、
①『強迫して無理やり売らせた買主』と『売主』という形です。帽子の色、観ていただいて。この場合もあるし、
②【強迫する人間A】が無理やり『売主B』に売らせて、『買主C』が買ちゃったという場合
とこの両パターンで考えます。

②の場合、このC買った人が、Aの強迫のことを知っているか知っていないかで、分けて考える必要があります。

ちょっと説明が前後しますが、強迫の場合は取消しができて、どんな場合も、強迫の場合は取消しができるという形になっています。すなわち、C買った人が強迫があったことを知ってようが知っていまいが、取消しができるということです。

悪意、善意

知っている
知らない

ここでひとつ新しくまた覚えてもらわないとダメなのが、この知ってるということについて「悪意」と言います。知らないの「善意」と言います。これは我々が一般的に日常的に使う悪意・善意ていうのはどちらかというと道徳的な意味だとか、あるいはこう倫理的にどうなんやという話で、それ悪意やないかとか、善意からやりましたとか言いますけど、民法で言うところの、法律用語としての悪意善意とは全く関係なくて、要するに知っているのは悪意、知らないのは善意なんです。

法律行為を判断する場合、「善意」「悪意」で分けて考えると。意思が表示されて、表示された意思について、有効か、無効か、取消しできるかという話のときに「善意」「悪意」がでてきます。ただ、強迫の場合にはどういうパターンであっても取消しはできるということです。この悪意善意っていうのが、次の詐欺のところでは、異なる判断になります。

詐欺

強迫との違い

それで詐欺、騙しなんですけれども、騙されて売っちゃったと。

①『騙した人=買主』『騙された人=売主』の場合、騙されたことに後で気ついたとき、買主は取消しができます。できます。

②ところがなんですね、詐欺では、【騙したA】『売主B』『買主C』で、買った人Cが詐欺のことを知っている場合には取消しができる。ところが、知らない場合には、これ取消しできないっていう形になってきます。

なんで詐欺の場合には違いがあるかというと、それは詐欺の場合には、騙された方、この場合『売主B』にも落ち度があると考えているんです。騙された側、「騙された奴が悪い」という言い方をすることあるかと思うんですけども、騙された側にもそれなりの落ち度があるからこういう問題が出てくると。

改正民法「詐欺」

取消しができる場合の追加

だから、『買主C』が騙されて売っちゃったんだということを知らない場合には、『売主B』は取消しできないというのが、今までの民法の立場だったのですが、令和2年の法改正で変更がありました。

過失

善意について過失の有無を問う

ちょっと戻ってこちらの方の説明にいきます。

今の「悪意善意」っていうのは「知ってる」「知らない」ということだけだったんですけれども、今度、「善意」についてその知らなかったことに「過失」があったか、なかったかっていうことを問いましょうということです。

「過失」っていうのは何かということについてなんですけども、この場合、「善意=知らない」ことについて注意義務というかな『払うべき注意というのを払ったか、払わなかったか』いうことなんです。知らないことについて、注意を払っておったらそれ知ってたやろうという場合には「過失があり」なんです。払うべき注意を払ってたけども、払ったけどもやっぱり知らなかったと、それでもわからなかったという場合には「過失なし」になります。

改正民法「詐欺」

買主の注意義務

令和2年までは「善意悪意」の括りだけだったんですけども、令和2年法改正から『買主C』に過失があった場合、知らなくても過失がある場合には、『売主B』は取消しができるようになったんです。過失がある場合には取消しができますと。これは大きな違いになってきます。

ということは、『買主C』さんは、折角ここで契約ができたというのに、後で取り消されたら困りますので、とりけされないためには、自分は善意で知らなかったということに加えて、知らなかったことに過失がない、ちゃんと注意を払う必要があるようになったということです。いわば、注意義務を怠っていないことの立証責任っていうのを課されるようになったということで、これなかなか困難、Cさんにとっては困難です。すなわち、騙されたほうの『売主B』さん有利に法が改正されたいう形になってきます。

ということで覚えることが、「善意悪意」だけじゃなくて善意について「過失」があったかなかったかというところまで分かれてきて、覚えること多くなったんですけども、こういう一連の流れがありました。

おさらい

法改正

意思

元に戻って、「詐欺」については、令和2年の法改正で変わりましたということ、それから「錯誤」について無効から取消しに変更されたということです。

意思っていうのが、とにもかくにも法律行為の出発点だということなんですけれども、その中身について、真意だったのかどうかということがまずあると、それから表示に問題はなかったのか、形成過程にはどうだったのかということを民法は問うてますっていう格好です。

それでは

全般のイメージというか全体像をつかんでいただいて、解説・問題の方に進んでいきたいかなと思います。



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